アビスのお話

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  見守る  

「アニスちゃーーん」
「……」
「アニスちゃーん」
「……」
「アニス」
「いません」
「アニス、応答は兵士の基本中の基本です。何度も呼ばせないでください。もうここから出ます。行動は迅速に、これまた、基本中の基本ですがねぇ」
「だ・か・ら、私は大佐の部下じゃありませんし、用はないと思いますけど。それに、私、守る人、いなくなっちゃいましたから、お役ごめんですよぅ」
「おや、それは失礼いたしました。しかし、いいのですか。あなたが守ろうとした人の気持ちはどうなるんです。まあ、所詮、レプリカの言ったことですからね。確かに無駄な行動はしない方が……」
「大佐の馬鹿。イオン様は、……。イオン様はレプリカなんかじゃないもん。イオン様はイオン様なんだから」
「それにしては裏切ったのはあなたの方からです」
「う……」
「ですから、まあ、私達もあなたと行動を共にするべきではないのかもしれませんが」
「そ、……そうだね。大佐が言うことは正しいよ。私は裏切り者だし、……」
「私に言い訳はしないでください。何を言っても、なしたことは消せませんからね。ええ、あなたのことを言ってるわけではありませんよ。経験的にってことで」
「……。大佐って、意地悪だよね」
「今更ですね」
「私、裏切り者だけど、……。だけど、もう一度、イオン様のために何かをしたい。イオン様の気持ちを消しちゃだめだって分かってる」
「さて……と、兵は行動あるのみです。私は皆にここを出ることを伝えてきますから」
「あの……大佐。ありがとう」
「は……。嫌ですねぇ。あなたにそんなことを言われても、私はあなたの上司でも、金蔓でもありませんよ」
「……。大佐、照れてるでしょ」
「行きますよ」
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