夢のお話

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第四夜

 冷たい風が吹くわけでも、季節が冬に向っているわけでも、その空間の温度が制御されていないわけでもないのに、その場に立てば、薄ら寒いものを覚える。声無き声が満ちた空間は訪れる者すべての言葉を奪う。
 数え切れない悲嘆と怨嗟に覆われたこの場所の先に永遠の眠りに守られているかのように、組織が最も望むものが置かれている。
 先を歩く上司は決してそこで立ち止まりもしなければ、振り返ることもない。もちろん、彼はこのような場所で話しかけるなどという愚を犯したことはない。
 だが、その背に漂うわずかな緊張感にこの場所が上司にとって常ならぬところであることが分かる。


 もういつだったか忘れてしまったが、まだ、上司を素朴に上級幹部として仰ぎ見ていたころだった。偶然、いつもなら利用しない塔のワープを降りるとき、上司と同乗した。
 その光景は噂に聞いてはいたが、まさに言葉には尽くせない一種の畏怖を彼の胸に呼び起こした。振り返った彼の表情に、何を思ったのか、青い髪の幹部は無表情だった面にわずかな悲哀を漂わせて一言つぶやいた。
「夢の跡だ」


 彼が慕っていた上官からある組織に入らないかと声をかけられたのは、それからすぐだった。
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