アビスのお話

　　暇つぶし　　

「アニス、どこへ行くのですか」
　ぎくっ
「え、あ、誰かな……と思ったら、大佐じゃないですか」
「日暮れともなると、この町は冷えますよ。かわいい女の子が一人歩きするのはお勧めいたしませんね」
「かわいいアニスちゃんを気遣ってくれるなんて、大佐、お暇なんですか。他の人達は雪の公園にとっくのとうに出て行きましたよ」
「私は、残念ながらこの町の出身ですから、そんな場所には行く必要ありませんからね。あなたも出遅れたようですし、公園まで行かずに、私がこの町の穴場でもご紹介いたしましょう」
「はぁ、大佐が……。何たくらんでるんですか」
「いやですね。いくら、私でもアニスちゃん相手にたくらみなぞ。ははは」
「むぅ。……。ま、つきあってあげてもいいですよ。何かおいしいものが出てくるんなら」
「お子様にはホットミルクでも注文してあげましょう」
「このアニスちゃんがつきあってあげるんですよ。ケーキの一つも出ないことには、割りに合わないですよ」
「ま、楽しみにしていてください」