七夕のお話(収束)

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星に感謝を

 満天星空の下、デリス・カーラーンの上で、クラトスは遥か昔の願いを思い出す。何をもって虚空を疾走する箒星の一年とするのかは難しいが、隣の者が頑なに守っているあの星の暦に従えば、今日は例の願い事の日だ。
 願い事はどうやら叶えてもらったようだ。星に感謝しないといけないかもしれない。横には、あのときと同じようにユアンが座って目を瞑っている。
「ユアン、今日は、何といった。あの、お姫様と皇子様が星の川の上で出会う日だ」
 星よりも数段と美しく輝く青い目が彼の方を見つめた。
「七夕だ、クラトス。何か願い事でもしたいことがあるのか」
「いや。もう、何も上達しないだろうから、願い事はいい。ただ、あのときに願ったことは叶ったと思って……」
 ユアンはその言葉に満面の笑みを浮かべた。
「一緒にいることか。あれは、誓いだからな。願いごとではないのだろう」
「やめてくれ。まだ、覚えていたのか」
「貴様が誓いを破ろうとしたことも忘れないぞ。私をおいて、一人でこの星にいこうとしたのはクラトスだからな」
「ユアン……」
「そんな顔をするな」
 ユアンは物いいたけに彼を見つめる恋人に軽く口付けを与えた。
「わかっている。私達の誓いよりも大切なことは多い。クラトスがそれを優先したって文句は言えない。私だってそうだった。でも、今回は生憎、私もあの星に残る理由はなかったのだから、一言くらい事前に相談してほしかったな」
「だが、大樹が……」
「大樹はロイド達が見守ってくれる。あれはマーテルではない。あの星の存在全てだ。私のマーテルはこの中にいる。お前には悪いがいつも一緒だから、あの星に私が残らねばならない理由はない」
 ユアンは自らの胸にクラトスの手をあてた。
「ロイドが教えてくれなければ、それこそ、誓いを破らされるところだったな」
「ユアン、すまなかった」
 クラトスは、ユアンの胸に押し当てられている自分の手が感じる愛しい者の鼓動に手が熱くなるのを感じた。
「許してくれ」
「クラトス、謝るな。今は共にある」
 ユアンはまたにっこりと微笑むと、自信なさそうにこちらを見つめる大切な者を抱きしめた。
「嫌と言っても、側にいるぞ。忘れさせない」
 ユアンの背に回るクラトスの腕に力がこもり、ゆっくりとクラトスが答える。
「私もだ。ユアン」
 

 薄い大気を通し、星で彩られた空の真ん中に銀砂、金砂よりもはっきりと銀河が浮かび上がり、二人の背景を飾る。



おまけ(戯れ)

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