番外編(収束)
疑問
「ロイド、その男はお前に何と言ったのだ」
「『ロイド……。次こそは必ずきさまを我がものとする覚悟しておくのだな!! 』
そう言ってたような気がする。だけど、一度も会ったことがないのに、変だよな。面影があると言われた。どこかで会ったのかな」
ユアン、何を考えているんだ。
まさか、ロイドに鞍替えするつもりか。それだけは、絶対に許さない。私がいるかぎり、それが息子でも、他の男に目を向けるなど決して許さないからな。
「おい、クラトス。何をそんなに怖い顔をしているんだ」
「クラトスさん、ロイドのこと、そんなに心配ですか」
「あ、ああ。とにかく、その男には注意することだ。決して近寄ってはならないぞ」
「分かってるって。あんまり悪い奴には見えなかったけどな。それより、コレット、お前こそ気をつけなくっちゃな」
「ロイドじゃ、頼りないんじゃない」
「ジーニアス、コレットは俺が守るんだ」
「あなた達、もう出発の時間よ。何も準備していないじゃない。……クラトス、あなた、宙を睨んでどうしたの」
ロイドに聞かされたユアンの言葉に頭が真っ白になった傭兵は、ノイシュとリフィルに助け起こされるまで、じっと物思いに耽っている。
何を言ってしまったのだろう。
つい、ロイドの顔を見ていたら、その背後にちらつく大切な者を思い浮かべてしまった。あの男の面影の濃さに、まるで以前から知っていた者同士のように話しかけてしまうところだった。慌てて、その場を取り繕ったつもりだったが、振り返るととても気まずいことを言ったような気がする。
クラトスが勘違いしたらどうしよう。
あいつは、意外と単純な奴だから、私が愛想をつかしたとがっかりしているんじゃないだろうか。しかし、ウィルガイアでこの話をするわけにはいかない。いくら何でもあからさまに私がロイドに会ったとは言えない。大体、当面あいつが上に戻ってくるとは思えない。
がっかりさせたままで過ごさせるのもかわいそうだが、私から会いにいくのもおかしいから、クラトス、許してくれ。
だけど、本当にあいつの若いときとアンナの雰囲気がそのままだったな。この先もロイドと会うのは楽しみだな。クラトスもあれだけ似ていたら、息子のことはさぞかし自慢だろう。
この後、クラトスを気遣って、ユアンがことあるごとにロイドを褒め上げるため、逆にクラトスの誤解が深まっていくことを誰も知らない。