転回
例えばこんな日(ありえません)
「おい、いつまで私の部屋にいる」
クラトスがぶらぶらと近づいてくる。
「ユアン、すまない。しかし、アンナも初産なので、無理をさせたくないのだ」
その台詞は耳が腐るほど聞いた。
もちろん、よいのだ。昔の同志が最愛の妻の出産を心配するのはよくわかる。私も表面上、貴様らと絶縁している身とはいえ、貴様もアンナも助けたいから、ここを提供した。
しかし、心配なら、妻の側にいればよいであろう。私の基地で、私の部屋で、私にむかって、今までの思い出を語り続けるな。
出会いの話はすでに5回は聞いたぞ。
子供ができたとアンナから告げられて驚いた話にいたっては、何回聞いたのかわからない。
男だったら、ロイド。女だったら、マーテル。わかった。名前は貴様たちが好きにつけるがよいであろう。どうせ、人の意見を聞かないのなら、意見を求めるな。
貴様は、家族ができて驚くほど変わった。
いや、訂正だ。遥か昔に彼の家族もこうだった。前に戻ったのだな。
ああ、あの二人の間に子供が生まれたら、私はいったいどうなるのだろう。
マーテル、私を助けてくれ!